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青釉浮彫りタイル

日本のタイル100年 美と用のあゆみ(INAXライブミュージアム)

小森忍(山茶窯) 昭和初期 左のタイルは縦28×横7.5×厚さ4センチ
小森忍(山茶窯) 昭和初期 左のタイルは縦28×横7.5×厚さ4センチ

 やや白濁した青い「なまこ釉」がつややかで形が様々なタイル。東京・麻布の鳥居坂にあった岩崎小弥太邸(1929年完成)の食堂の外壁用に作られた。

 窯業技師で釉薬研究の第一人者だった小森忍(1889~1962)が、現在の愛知県瀬戸市に開いた「山茶窯」で手がけたものだ。

 小森は京都市陶磁器試験場勤務を経て中国・大連に派遣され、中国古陶磁を研究した経歴を持つ。研究成果を生かして制作した工芸品のようなタイルは「美術タイル」と呼ばれ、有名百貨店や官公庁舎などの壁を飾った。

 岩崎邸のためには90種約3万個のタイルを作った、と当時の業界誌に記述が残っている。高度な釉薬技術をもってしても釉の色合いがそろわず、多くの「焼き損じ」が生じたといい、本作はそれを見越した予備品だ。

 「釉薬の厚みや色みをそろえようと苦心した小森のこだわりがつまっています」と学芸員の立花嘉乃さんは話す。

(2022年7月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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