土管を思わせるつややかな褐色の円筒。陶磁器デザイナー日根野作三(1907~84)と愛知県常滑市の県陶磁器試験場(現常滑窯業試験場)が手がけたランタンは円筒内に電球をつるすと、上部の窓から光がこぼれる。家庭園芸ブームに目をつけ、庭に飾るやきものとして提案された。
常滑では明治期以降、上下水道や農業用などの土管製造が主要産業の一つだった。土管は焼成中に塩を振りかけ、化学変化で表面をガラス質で覆う塩釉(えんゆう)技法を用いる。日根野はこれに着目して新製品をデザインしたのだ。
日根野は指導で各地を回る中で、特に東海地方の製陶所や試験場に多くの足跡を残した。「手仕事の温かさや人間味に魅力を見いだし、それぞれの土地の素材や技術を生かしたものづくりを提案した優れたプロデューサーだった」と、三重県立美術館学芸員の高曽由子さんは話す。
※会期は9月24日まで。