九代帯山与兵衛・井村彦次郎
明治時代中期 高さ75.9×幅28.5㌢ 横山美術館
高さ75㌢の花瓶は、今展に並ぶ約150点の中でも最大級。京焼の九代帯山与兵衛(1856~1922)が焼成し、横浜の陶磁器商・井村彦次郎が絵付けした輸出品だ。
素地の落ち着いた白色や貫入(釉薬の細かいひび)は、帯山が窯を構えた京都・粟田口の陶器の特徴。金色に縁取った扇面には朝顔やモミジ、鶴などを優美に描いている。
幕末に開港した横浜では、輸出向けの陶磁器生産や販売が急成長した。井村は横浜のメインストリートに、専属の上絵付(うわえつけ)工場を備えた商店を設立。他産地から取り寄せたやきものに上絵付を施す「横浜絵付」の先駆けとされる。「はんなりとした気品ある絵付は、素地の産地・京都を意識したものだろう」と、横山美術館学芸員の北山明乃さんは説明する。
一方の帯山与兵衛は1894年に粟田口での製陶を廃業。京都南部の南山焼の再興に携わり、その後台湾に渡ったとされる。
※会期は10月9日まで。