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紅梅の袿(うちき)と桜の細長(ほそなが)

岡崎市美術博物館 「至高の紫 典雅の紅 王朝の色に挑む」

2008年 絹 染司よしおか蔵

 袖や襟からのぞく赤、ピンク系のグラデーション。源氏物語の主人公・光源氏に嫁いだ皇女・女三宮(おんなさんのみやをイメージした装束は、染色家の吉岡幸雄(1946~2019)が物語中盤の「若菜上」の巻で書かれた女三宮の姿に基づいて制作した。


 4枚重ねた袿は、ベニバナの染液に布をくぐらせる回数を変えることで色の濃淡を出した。その上にまとった細長は、表の薄い絹地から裏地の赤が透けて見える。「明るく鮮やかな色が、若い女三宮にふさわしいと考えて制作された」と、岡崎市美術博物館学芸員の酒井明日香さんは話す。


 平安時代の貴族は自然や季節の移ろいを衣装に取り入れ、重ね着の配色を楽しんだ。源氏物語にも登場人物の衣装の色が多く描写されている。豊かな色彩に魅せられ、その再現をライフワークとした吉岡は、記述や関連文献を丹念に読み解き、往時の植物染めで表現した。

 ※会期は11月5日まで。

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