まるで青と緑のシルエットのようなカキツバタの群生。明治~昭和期に活躍した図案家・画家の神坂雪佳(1866~1942)の図案集「百々世草(ももよぐさ)」に収められた「八つ橋」の原画だ。2001年には仏ブランド・エルメスの雑誌の表紙を飾った。
幕末の京都に生まれた雪佳は四条派の画技を学んだ後、20代で図案家の道へ。古典的な主題や文様を取り入れたデザインを考案し、約10冊の図案集を発表した。中でも「百々世草」は木版多色刷りの60図を収めた代表作で、風景や動物など多様な画題を明快な色彩と大胆な画面構成で表した。
西洋文化が押し寄せる中、雪佳は日本古来の美を再認識し、江戸初期に興った琳派を手本とした。本作も、尾形光琳や酒井抱一ら琳派の絵師が描いたカキツバタの主題に着想したとされる。今展では光琳の国宝「燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ)」を意識して描いた「杜若(かきつばた)図屏風」も展示される。
※会期は11月26日まで。