右隻にタンポポ、カキツバタ、タチアオイ、左隻にキキョウ、キク、ツワブキ……。移ろう季節を流れるように表現した、図案家・画家の神坂雪佳(1866~1942)晩年の大作だ。
四季の草花は、敬愛する琳派の絵師たちも好んだ主題だった。個々の草花は写実的に描かれているが、「リズミカルに配置する構図感覚は、図案家と画家を行き来した雪佳ならでは」と、パラミタミュージアム学芸員の衣斐唯子さんは話す。
絵の具が乾かないうちに別の色を垂らしてにじませる「たらし込み」、葉脈を表す金色の描線など琳派の技法も随所にみられる。ゆったりとした線や明快な色使いも、琳派の特徴だ。
雪佳は絵を求められることも多く、びょうぶや掛け軸、社寺のふすま絵などを手がけた。四条派に学んだ確かな描写力の上におおらかで品のある画風を確立した。
※会期は11月26日まで。