本作に描かれたトラは、1861年にオランダ人が横浜港に連れてきたという。眼光鋭く、鋭い爪の姿を描き、天竺(インド)生まれで身の丈「七尺」(2㍍超)、「立て」「回れ」などの芸ができるなどと記されている。
江戸時代、トラやゾウ、ラクダなど舶来の動物たちの見せ物興行が各地で行われ、人々の関心を集めた。このトラは岐阜・大垣でも披露され、大垣藩医がその様子を驚きとともに記した日記も残っているという。
速報性重視の瓦版は黒の単色刷りが主流だった。幕府の出版統制を避けるため製作者を記載しない場合が多かったというが、本作は多色刷りで、絵の隣には浮世絵師・落合芳幾の名がある。
「見せ物興行の広告として、また土産物として現地で配ったものだろう」と、豊橋市二川宿本陣資料館の和田実館長は解説する。
※会期は12月10日まで。