河原にのぼりが林立し、そろいの衣装を着た大勢の人々が荷車を引く。一見すると祭りのようだが、荷車に積み込まれているのは土砂にみえる。
1856年5月16日から「晴天凡(およそ)百日」の期間に行われた京都・加茂川(鴨川)の川ざらえの様子を伝える瓦版だ。
川ざらえとは、川の底にたまった土砂などを取り除く作業。「つらい重労働を、非日常的な祝祭のように盛り上げて楽しんだのだろう」と、豊橋市二川宿本陣資料館の和田実館長はみる。
幕末の不安定な世相を背景に、人々は不安を紛らわすかのようにお祭り騒ぎを好んだという。東海地方でも「ええじゃないか」とはやしながら乱舞する民衆運動が起き、各地に広がった。「本作のように気勢を上げる民衆を描いた瓦版が出回ったことも、人々の気持ちをかきたてたのかもしれない」と和田さんは解説する。
※会期は12月10日まで。