江戸後期 長さ11×高さ6.3×幅6.2㌢
桑山美術館蔵
金色に輝く小づちのような六角柱の振々香合(ぶりぶりこうごう)。珍しい形は江戸時代の玩具「ぶりぶり」に由来する。ひもを付けて木の球を打ったり、車輪を付けてひもで引いたりして遊んだという。
転じて、吉祥のモチーフを配した正月の置物や、茶席の香合として用いられるようになった。本作には鶴亀や松竹柄のほか、タンポポやタケノコも配されて春の始まりを思わせる華やかさだ。下部には願いを成就するとされる宝珠も。
振々香合の多くは木地に金箔(きんぱく)を貼って彩色されるというが、本作には蒔絵(まきえ)の技法が駆使されている。文様の部分を高蒔絵で盛り上げ、竹の葉や鶴の羽根は細い輪郭線を描割(かきわり)技法で表現した。鶴の頭の赤色はサンゴ片の象嵌(ぞうがん)が施されている。
「細部まで丁寧に表現されていて、豪華さと品格を兼ね備えている」と桑山美術館学芸員の前田明美さんは説明する。
※会期は2月4日まで。