藤井達吉 紺紙金泥・着色
92×60㌢ 碧南市藤井達吉現代美術館寄託
穴窯の中で金色にゆらめく炎に焼かれているのは、仏教の経典を収めるための経筒。描いたのは、現在の愛知県碧南市出身の美術工芸家・藤井達吉(1881~1964)。七宝、染織、金工、和紙工芸、日本画などジャンルを横断して制作し、刺繡(ししゅう)やアップリケを施したびょうぶなど先駆的な作品を生み出した。
経筒を保管する容器は、愛知県の猿投窯でも生産されていたという。「高温の窯の中は、人為の及ばない世界。そこに聖なるものを見いだしたのだろう」と、碧南市藤井達吉現代美術館学芸員の大長悠子さんはみる。背景には月と星、太陽が並び、神秘的な雰囲気を強調している。
藤井は作品のモチーフに野の草花、天体を繰り返し採り入れた。「本作からも自然への畏敬(いけい)の念が感じられる」と大長さんは説明する。今展では藤井が晩年に描いた「土星」なども展示されている。