ヘラの跡がよく見える、素焼きの人形。本作の作者・月谷初子(1869~1945)は、日本で最初期に洋風彫刻を学んだ陶彫作家だ。
12歳で洋風彫刻の先駆者・小倉惣次郎に弟子入り、その後、陶芸家・初代宮川香山に師事した。陶彫の技術を生かして全国の窯場を渡り歩き、15年に名古屋市内で工房を開いた。
輸出用の陶磁製置物「瀬戸ノベルティ」の原型師として生計を立てながら、人形や置物など多様な作品を残した。「人物も動物も、独特の柔らかい表情が特徴」と、愛知県美術館学芸員の石崎尚さん。女性作家作品を特集する「うーまんめいど」の一作品として選んだ。
「宵越しの金は持たない」豪快な性格で、駆け落ちするなど波瀾(はらん)万丈な人生を送ったという月谷。晩年は生活苦に陥ったが、制作用の道具は手放さなかったという。
※会期は4月14日まで。