トラバントは旧東ドイツ唯一の大衆車。1991年まで30年以上にわたって製造され、「トラビ」の愛称で親しまれた。89年のベルリンの壁崩壊後も、旧西ドイツ製のBMWやベンツなどと並んで走っていた。本作は64年に生産が始まった後期モデルで、後部に荷室があるワゴンタイプだ。
東ドイツは鋼鉄が不足していたため、トラバントのボディーは廃棄綿とフェノール樹脂を原料とした複合プラスチック製。表面の質感から「段ボール」と揶揄(やゆ)された。
「製造しやすいシンプルな作り。ノスタルジックで愛敬も感じられます」と、トヨタ博物館学芸・企画1グループの鳥居十和樹さんは話す。
世界の車と自動車文化の歴史を車両や資料で紹介するトヨタ博物館。本展では常設展示以外の収蔵車約400台のうち展示機会の少ない13台にスポットを当てる。
※会期は6月30日まで。