歌川広重
嘉永(1848~54)末年ごろ
貨幣・浮世絵ミュージアム蔵
女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。
歌川広重が手がけた東海道名所絵の中で、人物を主体にした通称「人物東海道」の一作だ。「担ぎ手の穏やかな表情や手足の筋肉が描写され、調子を合わせて進む様子が伝わってくる」と、貨幣・浮世絵ミュージアム学芸員の鏡味千佳さん。
庶民を乗せて宿場間を行き来した駕籠は、簡素な造りだった。本作に描かれた、竹で編んだ座面に網代(あじろ)の屋根がついただけの駕籠は、主に山道で使われたという。
東海道随一の難所・箱根では、担ぎ手の掛け声は「へっちょい、へっちょい」。景気づけにうたった「箱根駕籠舁唄」も伝わる。
街道を行き交う人々の声、修行僧が鳴らす仏具の音、土地特有の唄……。本展では広重作品を通じて、江戸時代の旅路を彩った「音」に耳を傾ける。
※会期は5月12日まで。