江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女(おはらめ)、茶筅(ちゃせん)をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿(かつぎ)の高貴な女性が行き交う。
「旅人たちはこの光景に、やっと京に着いたのだと実感したことでしょう」と、貨幣・浮世絵ミュージアム学芸員の鏡味千佳さん。京らしい姿の人々からは京ことばも聞こえてきそう。「風景だけでなく土地特有の言葉の響きは、旅の気分を盛り上げてくれます」
街道が整えられた江戸時代は、さまざまな地方のお国柄を映し、特有の言葉を織り込んだ唄が口伝えで広まった。旅人や荷物を載せた馬を引く馬子(まご)が歌う馬子唄、伊勢神宮近くの花街で参詣(さんけい)客相手に歌われた伊勢音頭などを旅人は聞き覚え、故郷への「土産」にしたという。
※会期は5月12日まで。