歴史上の出来事や人物を描いた歴史画家として知られる守屋多々志(1912~2003)は、古今東西の物語や伝説をもとにした作品も多く残した。中でも「桃太郎」=写真上=と、「金太郎」=同下=は何度も手がけた題材だ。
2作品はいずれも、大垣市守屋多々志美術館の開館に際して描かれた。画面中央に主人公が構え、擬人化された動物が取り囲む。「構図が同様で、対をなしているともいえる。動物たちのユーモラスな表現も印象的」と、同館学芸員の川瀬邦聡さん。「金太郎」のウサギとサルが相撲を取る姿は、まるで「鳥獣戯画」。守屋は若い頃、模写に取り組んだという。
「桃太郎」は古代の皇族・吉備津彦命(きびつひこのみこと)の鬼退治伝説を、「金太郎」は平安時代の武士・坂田金時(さかたのきんとき)の幼少期をモデルとする説もある。「守屋は二つの昔話を歴史画の延長にあると捉えて描いたのかもしれない」と、川瀬さんは説明する。