「新訂万国全図」は江戸時代後期の1810年、幕府天文方の高橋景保らが3年がかりで作製した日本初の官版世界図。ヨーロッパ製の世界図をもとに、東西両半球を二つの円で表した。
西洋製地図では東端に描かれる日本を、本図では中央に位置した。さらに、1808~09年に北方を調査した探検家・間宮林蔵の報告を反映し、樺太を島として描いている。「最新の情報が盛り込まれ、当時最も優れた世界地図だった」と、トヨタ産業技術記念館学芸・自動車館グループの古里博英さん。「日本近海に異国船が現れ始めた時期。幕府は防衛のため、世界図作製を命じたのでは」と話す。
「新訂万国全図」は手書きで作られた後、当時最新技術だった銅版刷りでも刊行された。展示品はその写しで、東半球と西半球の2枚に分かれている。並べると幅約4㍍で、銅版図の約2倍のサイズという。