象限儀(しょう・げん・ぎ)の別名は四分儀。円を4分の1に分割した扇形で、古くからヨーロッパで天体観測に用いられてきた。本体には0~90度の目盛りが刻まれている。ストローのように細長い照準器をのぞいて天体を捉え、高度を測る仕組みだ。
展示品は小型で、かね尺や分度器とともに携帯用の箱に収められていたという。本体には、日本初の実測地図を作った「伊能忠敬」の銘が刻まれている。
伊能はほぼ17年をかけた全国測量の旅で、象限儀を活用していた。坂道では傾斜角度を測り、地図に必要な水平距離に換算した。
地図作りには天体観測も欠かせなかった。観測地の緯度を求めるため、象限儀を用いて恒星の高度を測定したという。「象限儀は世界水準の正確な地図作りを支えた、精密な測定道具のひとつです」と、トヨタ産業技術記念館学芸・自動車館グループの古里博英さんは話す。