石や焼き物、ガラスなどのかけらを組み合わせて絵や模様を表すモザイク画。今展は、昭和期に彩り豊かなモザイク画や工芸品を手がけた板谷梅樹(いたやうめき)(1907~63)を紹介する。
梅樹は、近代を代表する陶芸家・板谷波山(はざん)の五男。幼少期に父が砕いた器のかけらで遊んだのをきっかけに、陶片を組み合わせたモザイク画制作を20代半ばから志した。1933年には東京・有楽町にあった日本劇場(日劇)玄関ホールの巨大壁画を制作した。
同時期に手がけたとされる本作も、陶片を用いている。「それぞれのパーツが丸みを帯び、色合いや質感も異なる。器のかけらから生み出される、独特の表情が魅力」と学芸員の高橋麻希さん。
パーツは、焼き物の本体から表面の釉薬(ゆうやく)部分を薄くはぎ取ったとされる。「細密で独創的な技法に、梅樹の細やかな人となりを感じられる」と高橋さんはみる。