羽を広げたクジャクだろうか。水色や青、紺、黒など様々な色のタイル片を組み合わせて表したのは、昭和期にモザイク作家として活動した板谷梅樹。本作は最晩年の1959年に手がけ、日展に出品した。
「デフォルメされた鳥の姿がモダンで愛らしい。構図や配色も絶妙で、梅樹の色彩感覚が発揮されている」と、学芸員の高橋麻希さんは説明する。
梅樹は、陶芸家の父・板谷波山の仕事を間近で見て育った。18歳で単身ブラジルに渡って農場で働き、帰国後はステンドグラス作家の小川三知(さんち)に弟子入り。「モザイク作家としてデビューする前から様々な経験を積んだことも、色彩や造形の感覚に影響を与えていると思われる」と高橋さんは話す。
初期は陶磁器のかけらなどを使って制作していたが、戦後は陶片が思うように手に入らず、薄板状のタイルをカットして用いるようになったという。