壺のモチーフは、古代エジプトの守護神ベス。丸く小さな耳、口やあごのひげ、細い腕が表されていてユーモアたっぷりだ。眉をつり上げてにらむような表情には、邪悪なものを遠ざける意味があったという。
ベスは大きな頭、舌を出した姿などでも表現される魔よけの神。家庭を見守り、特に妊婦や幼い子どもを危険から遠ざけるともいわれた。この壺は両手に収まるサイズ。家庭で使われ、ミルクや液状の薬などが入っていたとも想像できるという。
今展のテーマの一つは、古代エジプト人の日常生活。1980年代後半にはピラミッド建造に関わった人々の都市「ピラミッド・タウン」が見つかり、発掘調査から当時の暮らしが明らかになってきた。
ピラミッド・タウン発掘に関わってきた今展監修者の河江肖剰(ゆきのり)名古屋大教授は、「食事や寝室の様子などを表す遺物から、人々の暮らしに着目してほしい」と話す。