終戦間際の1945年8月13日、日本画家の川端龍子が暮らす東京の自宅兼アトリエは空襲で倒壊した。本作のモチーフはこの時、爆風で吹き飛んだ庭の菜園だ。
トマトやカボチャ、ナスの花。食糧難をしのぐために栽培していた野菜が飛び散っていく。画面右下の細かな金箔は、爆弾の閃光を表した。
タイトルの散華は、戦死、花をまき供養することも意味する。龍子は三男を戦地で亡くし、空襲で大きな被害を受けた。「自身の体験を投影した本作から、弔いの気持ちと平和への願いが感じられる」と、大田区立龍子記念館副館長の木村拓也さん。
龍子は、無事だった別棟のアトリエに泊まり込んで制作。終戦直後の10月に、本作も含めた展覧会を開催した。「龍子は、大衆に開かれた芸術、社会の役に立つ芸術を一貫して追求した。終戦直後の人々を元気づけたいと考えたのだろう」と木村さんはみる。