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あやめの衣

一宮市三岸節子記念美術館 「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」

1927年 油絵・クラフト紙(カンバスに貼り付け) ポーラ美術館蔵

 女性の左肩から右腕へ、白い背中を斜めに横切る着物の襟の線。そして右の腰あたりから左下に向かって、赤い帯状の模様が青い布地とコントラストをなして流れる。視線を誘導する構図や、しなやかな着物の線や質感。岡田三郎助の真骨頂といえる代表作だ。

 学芸員の杉山章子さんは、シンプルな構図が着物と女性の美しさを際立たせていると話す。「着物や金地に見える背景には、日本的な雰囲気があります。また、当時出回り始めたばかりのクラフト紙に油彩で描かれており、表面はなめらか」
 洋画家として日本的な女性像を追究した岡田は、モデルに着せる着物をコレクションしていた。画中の江戸後期の小袖もその1点で、赤い帯状の模様は絞りの杜若(かきつばた)だ。工芸的な価値も高く、高級呉服づくりのデザインの参考にするために収集された「松坂屋コレクション」としていまも保存されている。

 

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