螺旋(らせん)を描いて広がる抽象的な木彫に、年輪のような無数の線がしなやかさを与えている。作者のタピオ・ヴィルカラは、北欧デザインの立役者として知られるデザイナー。その才はオブジェにも見ることができる。
ヴィルカラは、素材が形を決めると考え、材質に合ったデザインを探して何十枚もスケッチしている。この頃、木彫の素材として合板を使い、板の継ぎ目を等高線のように削り出す手法を編み出した。学芸員の立花昭さんは、「合板はどう削ればどこに線が出るのか予測できるので、あらかじめ彫り出す線をイメージしやすかったのでは」と話す。
方向によって形が違って見えるこの作品は、展示品の一つ、巻き貝のドローイングと印象が重なる。フィンランドの海沿いの町で生まれ育ち、北極海近くの湖畔にも居を構えたヴィルカラ。鳥や貝などの自然を好んでモチーフにした。