青々とした夏草の草原を、鳥の一群が渡る。
奈良県明日香村に生まれ育った日本画家の烏頭尾精が、画業を通して描き続けているのは鳥。初期の「地にいる鳥」が、高度経済成長期を迎えた頃から空を羽ばたくようになり、そのうち風景も主題となった。
「飛ぶ鳥を描き始めてからは、風景が見えてきたそうです。同時に多く使い始めた群青と緑青(ろくしょう)は、日本画の代表的な色。一つの色で表現する豊かなグラデーションが見事です」と、学芸課長の鬼頭美奈子さん。
近年では、一見して鳥の姿が見当たらない風景作品もあるという。「もしかすると、自分が鳥になったつもりで、空から見る風景を描いているのかもしれません」
京都の大学に通い始めてから、地平の広い奈良の美しさを意識するようになったという烏頭尾。94歳の今も、飛鳥時代の奈良の空を舞う鳥の目で、故郷の風景を表現している。