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四谷シモン「Portrait d’une petite fille」

美少女の美術史(静岡県立美術館)

 


美博ノート
久保良撮影

 

   黒目がちの大きな瞳。本来は鑑賞者に見られる側であるはずの人形が、あたかも視線をこちらに投げ返しているかのようだ。夢幻的な作品を制作することで知られる人形作家、四谷シモンの代表作だ。

 四谷は、唐十郎主宰の劇団「状況劇場」の女形など、俳優として活動する一方で、さまざまなポーズを取れる球体関節を持った人形などを手がける。現代人の記憶や意識を刺激する作風は、フランス文学者の渋澤龍彦や多くの芸術家を魅了した。

 この作品は渋澤のコレクションとなり書斎に飾られた。飼い犬にかじられて指先はぼろぼろ。それでも「主体的に語り出さない純粋客体、玩弄物的な存在」(渋澤)として、渋澤の少女論にインスピレーションを与え続けたという。

(2014年10月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)