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マイケル・メイザー「ハーヴァードの夕方」

「美術する身体」展(名古屋ボストン美術館)

 


美博ノート
「ハーヴァードの夕方」
Photo©2014MFA,Boston ©GAIL MAZUR

 

 暗闇に女性の姿が浮かび上がる。思慮深く下を向くのは憂いなのか、瞑想(めいそう)なのか。はかなげでもあり、かっこよくもある。

 米画家マイケル・メイザー(1935~2009)はほぼ一貫して人物を題材にしてきた。精神科病院でアートセラピーのボランティアをしていた経験から描いた、エッチングの「閉鎖病棟」シリーズで評価を得る。その後、ドガの作品に影響を受け、版画技法の一つ、モノタイプを多く手がけた。

 版全体に黒インクを塗り、指や布で直接拭き取ってハイライト部分を作ることで、輪郭を形作る。その版が乾かないうちに紙をのせて図を転写するため、一発勝負で1点しか作れない。

 メイザーは最小限のタッチで目の前に立つ女性の姿を的確に捉えている。

(2014年11月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)