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初音蒔絵(まきえ)鏡台

装いの美 大名のおしゃれ(徳川美術館)

 


美博ノート
初音蒔絵(まきえ)鏡台

 

 3代将軍家光の娘・千代姫が、尾張徳川家2代・光友のもとに嫁ぐ際、嫁入り道具として持参した化粧道具一式。

 「源氏物語」の「初音」の帖(じょう)で、明石の上が離れて暮らす幼い娘におくった和歌「年月を 松にひかれて ふる人に けふ鶯(うぐいす)の 初音きかせよ」を全体の意匠とし、歌の文字がちりばめられている。

 室町時代から続く蒔絵師、幸阿弥(こうあみ)家の10代・長重が手がけた国宝。何重にも漆を塗り重ねることで複雑な色合いを生み出し、梅の花の部分には赤いサンゴを埋め込むなど、贅(ぜい)の限りを尽くした。

 引き出し付きの台に柱を立て、鏡をかけて使用する。白粉(おしろい)入れやお歯黒を入れる附子(ふし)箱、紅を溶く猪口(ちょこ)などの化粧道具がコンパクトに納められる。

(2014年12月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)