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舟越桂「長い休止符」 |
憂いのある表情で演奏のポーズを見せる男性。しかし腕の中に楽器はない。足元に広がる影に寄り添うように、鉄のバイオリンが置かれている。
これまで一貫して人物像に取り組んできた舟越桂(63)は、その作品の多くが上半身像。全身像は珍しい。クスノキから制作した像を自立させるためもあり、影の部分には鉄を選んだが、その質感が重々しい雰囲気を加えていた。
作品のモデルとなったのは、音楽家の古い友人。背景には、厳しい音楽の世界で挫折を経験した彼の苦悩があったという。「音楽に向き合う友人の姿に、舟越自身も思いを寄せたのでは」と学芸員の門田彩さん。タイトルが示す通り、静寂の漂う作品だ。