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ぶらり、ミュージアム

「歴博」に歴史あり

(国立歴史民俗博物館)

  • 外観
  • 高床倉庫復元
  • アプローチデッキ

 「国立」を冠し芸術作品・美術工芸品を収蔵、展示する東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館はあまりにも有名で、足を運ばれたことのある方も多いと思います。しかし、それらの4館がカバーしきれない歴史学や民俗学のジャンルを体系的に展示する国立の博物館は、日本にひと館しか存在しません。その国内唯一の「国立」の歴史博物館こそが、千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館(通称:歴博)です。

 歴博が開館したのは、今から32年前の1983年のこと。近代化の波に押され風化する日本の歴史や、消えゆく民俗伝承を留めておくためにもこの博物館は必要とされていたのです。

 京成佐倉駅から徒歩15分。緩やかな坂道を上ると3万坪以上の広大な敷地を誇る歴博の建物が目に入って来ます。市街地にこれほどの土地があるとは驚きですが、ここは江戸時代初め(1611年)に土井利勝によって築かれた佐倉城の跡地であると知れば納得です。印旛沼、鹿島川・高崎川が流れる低地の西向きに突き出した台地の先端に位置する佐倉城は地勢を巧みに利用した江戸の東を守る要として、有力譜代大名が城主に名を連ねました。

 しかしこの地の歴史はそれだけではありません。明治に入り廃城令が発布されると城の建物は壊されてしまいます。その後、明治政府は陸軍の連隊が置かれることとなり、第2次大戦が終わるまで帝国陸軍歩兵隊の駐屯地として利用されました。リニューアルを終えた1930年代以降の歴史を紹介する常設第6展示室「戦争と平和」では、当時の佐倉城跡を伝える再現模型も展示されています。

 こうして歴博の歴史をひもといて見ていくと400年以上の長きにわたり、戦いと密接に関わりのある場所であったことが分かります。悲しいかな戦や戦争は歴史と切っても切り離せないものです。そうした地に唯一の国立の歴史博物館が建っていることの意味を頭の片隅に入れつつあらためて日本の歴史や民俗を見なおすことも有意義なことだと思います。

 

耳よりばなし

 2004年より大学共同利用機関法人(人間文化研究機関)を構成する機関のひとつとなり、ますますお堅いイメージの強くなった歴博ですが、意欲的でユニークな企画展も開催しています。とりわけ2015年5月6日まで開催している「大ニセモノ博覧会-贋造と模倣の文化史-」は歴博の歴史上最もチャレンジングな展覧会と言っても過言ではありません。またエントランスホールから桜や佐倉城址公園の自然を借景として望む巨大な7枚のガラス(高さ3.95メートル、幅13.5メートル)は、建設当時から屏風のように仕立てられおり四季折々の自然の景色を「四季花鳥図屏風」のごとく楽しめる粋なつくりとなっています。


データ

国立歴史民俗博物館

〒285-8502
千葉県佐倉市城内町117
開館時間:3月~9月 午前9時30分~午後5時
10月~2月 午前9時30分~午後4時30分
(入場は閉館の30分前まで)

休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)・年末年始(12月27日から1月4日まで)
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL:https://www.rekihaku.ac.jp/


 【筆者プロフィール】

中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/

(2015年3月30日掲載。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は更新時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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