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尾形光琳の魅力を存分に

(MOA美術館)

外観
外観
外観 展示室へ続くエスカレーター 光琳屋敷 特別公開(内部拝観)をGW期間(5月2日~6日)に実施 ツツジ山と水晶殿

 今年(2015年)は、本阿弥光悦(1558~1637)が、元和元年(1615年)に徳川家康から鷹峯の地を拝領してちょうど400年目にあたります。琳派発祥の地である京都では「琳派400年記念祭」が展開され展覧会のみならず様々なイベントが開催されています。

 関東で琳派、特にその言葉の語源となった尾形光琳の作品を多く所蔵している美術館にMOA美術館があります。JR東海道線・熱海駅からタクシーでワンメーターの場所にありながら、美術館のメインロビーからは、相模灘に浮かぶ初島や伊豆大島が一望できる高台に建つ私設美術館です。美術館の名前は、創立者である岡田茂吉氏の頭文字を冠したものです。(「Mokichi Okada Association」)

 中でも岡田茂吉氏が熱心に蒐集を重ねたのが琳派、とりわけ尾形光琳の作品でした。光琳の画力について「彼の絵ほど簡略にしてしかもその物の実態を把握していて、しかも物体の形を忠実に実現している。ちょうど千万言を費やすとも人を動かし難いところを三十一文字の和歌の力が動かし得るのと同様である。」と称賛しています。

 尾形光琳筆 国宝「紅白梅図屏風」をはじめとする光琳作品だけでなく、美術館敷地内に琳派の美を取り入れた庭園や「光琳屋敷」まで復元し訪れる人々に多角的に琳派に接してもらえる工夫をしています。とりわけ、正徳元年(1711年)から翌年にかけ京都新町二条に建てられ光琳が晩年を過ごした「光琳屋敷」は、光琳自らが間取り図や寸法などを描いた精密な図面をもとに復元されたものです。

 光琳屋敷2階の画室(絵所)は16畳の広さがあり、MOA美術館の至宝・国宝「紅白梅図屏風」もここで描かれたのではないかと想像が膨らみます。実際に中庭には白梅・紅梅が植えられており、ちょっとしたタイムトラベル感覚を味わうことが出来ます。

 美術館に隣接し、相模湾の景観をびょうぶ絵のように見られる、瑞雲郷「水晶殿」(展望台)も通常公開となっており、ゴールデンウイークごろにはツツジも見頃です。温泉地として根強い人気のある熱海の観光名所として今や1位、2位を競うほどのスポットに成長したMOA美術館の魅力。一度足を運んでみると誰しもが納得するはずです。

 

耳よりばなし

 MOA美術館の展示室にたどり着くまでに、エントランスから長い長いエスカレーターに乗る必要があります。これがまさに桃源郷ならぬ異次元の美の世界へのアプローチとしてこれ以上ない演出となっています。計14基で総延長は約200メートル、高低差は約60メートルにも及ぶエスカレーターは俗世間から隔絶した場所へ導いてくれます。その途中には、展示会やコンサートが開催される多目的ホール「円形ホール」もあり不思議な雰囲気を作り出しています。このエントランス・アプローチは他の美術館にも参考にされている最初の見どころでもあります。一度体感すると癖になる?!そんなエスカレーターです。


データ

MOA美術館

〒413-8511
静岡県熱海市桃山町26-2
開館時間:9時30分~16時30分まで
(入場は閉館の30分前まで)

休館日:毎週木曜日(祝日の場合開館)・年末年始
電話:0557-84-2511
URL:http://www.moaart.or.jp/


 【筆者プロフィール】

中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/

(2015年4月13日掲載。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は更新時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)