都内から電車で約1時間の場所に位置する千葉県佐倉市。古い歴史を誇り、国立歴史民俗博物館がある街としても知られています。街の中心部から少し外れると印旛沼をはじめとする豊かな自然が多く残っています。JR佐倉駅から美術館の無料送迎バスに揺られること20分。佐倉市南西端に位置し、山里の地形を生かした約9 万坪の緑豊かな敷地中にDIC川村記念美術館はあります。
レンブラントが29歳の時に描いた肖像画「広つば帽を被った男」や印象派、エコール・ド・パリの画家たちの優品から、長谷川等伯「烏鷺図屏風」など日本絵画のコレクションも充実しています。中でもこの美術館の名を日本のみならず世界に知らしめているのが、マーク・ロスコによる「シーグラム壁画」です。7点から成る作品群は「ロスコ・ルーム」と呼ばれる専用の部屋に常設展示されています。ロンドンの、テイト・モダンにもこれと同時に制作された9点の作品が同じように常設されています。成田空港へ向かう途中に位置するDIC川村記念美術館に「ロスコ・ルーム」を目的に訪れる外国人旅行者もいるそうです。
こうした所蔵作品及び常設展示作品だけを観るだけでも、佐倉まで遠征する価値は十分にありますが、さらにこの美術館の価値を高めているのが、前述した広大な敷地内に四季折々の顔を見せる豊かな自然美です。美術館の中だけでなく、敷地内にはヘンリー・ムーア「ブロンズの形態」や佐藤忠良の「緑」といった野外彫刻が点在しています。冬には菜の花を背景に、また色鮮やかな紅葉と共に愛でるぜいたくな時間を過ごすことが出来ます。
敷地内中央にある白鳥池の水鳥たちは愛くるしい姿を間近で見せてくれます。中でも中国で、野生のサカツラガンをもとにしてつくられた飼い鳥である「シナガチョウ」はこの美術館のアイドル的存在です。よく鳴く鳥なので中国では番犬のように飼われることが多いそうですが、ここのシナガチョウたちはとてもよく人慣れしています。「ようこそお越し下さいました!」と元気よく来館者を迎えてくれます。
美術館内のミュージアム・ショップも個性豊かなグッズを取りそろえていていつも何かしら購入してしまうのですが、もう一カ所敷地内のレストラン「ベルヴェデーレ」に隣接するギフトショップは必ず立ち寄る場所のひとつです。国内外の珍しい食べ物やグッズを扱うセレクトショップといったところでしょうか。隣町の四街道市にあるコーヒー豆専門店「TABEI COFFEE」に依頼して作られたDIC川村記念美術館オリジナルブレンドコーヒーは特におすすめです。中身もさることながら、美術館と庭園をモチーフとした可愛らしいイラストのパッケージもすてきな一品です。 |
DIC川村記念美術館
〒285-8505
千葉県佐倉市坂戸631
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝休日は開館、翌平日休館。)
電話:0120-498-130
URL:http://kawamura-museum.dic.co.jp/
【筆者プロフィール】
中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/