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作り手にスポットライトを当てたい

(株)伝統デザイン工房 「職人醤油」 代表 
高橋万太郎さん

ザ・チャレンジャー
店頭で醤油を試飲する客に、その魅力と奥深さを語る高橋さん
ザ・チャレンジャー ザ・チャレンジャー ザ・チャレンジャー

 日本の食文化に欠かせない醤油(しょうゆ)。一升瓶やペットボトル入りを近所のスーパーや醸造元で買い求めるのが日常の風景だ。しかし、前橋市の醤油販売店「職人醤油」は10年前、醤油を100ミリリットルの小瓶に入れ、ミニチュアにデザインしたラベルを貼って店頭やインターネットで販売し始めた。定番の濃い口から淡口(うすくち)、甘口、白、溜(たまり)、再仕込みと、多様な風味を楽しめると評判になり、昨年2月には松屋銀座に出店。取り扱う醤油は全国各地の80種類になった。社長の高橋万太郎さん(36)に醤油への思いを聞いた。

(井上優子)

 

 ――大学卒業後、3年でサラリーマンを辞め、醤油の販売店を始めたそうですが、何がきっかけだったのですか。

 もともと日本の伝統産業や地域産業の分野で何か起業したいという思いがありました。退職後、妻と2人で3カ月ほど車で各地を回る中で、「いいものを作っている自信はあるけれど、売れない」と嘆く伝統産業を生業(なりわい)とする人々に出会いました。その話を聞いて、作り手と使い手をつないでいくことに自分の立ち位置があるのでは、と思ったんです。

職人醤油

 ――なぜ醤油を選んだのですか。

 商品を使う立場から、日本人に欠かせないもので、選択肢がなくて不満なのものは何だろうと突き詰めていった結果です。多種多様な醤油を消費者が料理や好みによって選べるようにと、100ミリリットルの小瓶に詰めて小売りしようと考えたわけです。初めは蔵元さんに「1本あたりの量が少なすぎる」と言われましたが、空(から)の小瓶を持っていきました。すると「じゃあ、100本詰めてやるよ」って。そういった蔵元の厚意と遊び心に助けられ、最初の8種類が集まり、インターネットのサイトを開きました。

 ――蔵元とのおつきあいの中で感じたことはありますか?

 真剣に醤油づくりに向き合っている蔵元さんがたくさんいると感じました。蔵元さんによっては、昔ながらの木桶で醸造している人たちがいます。ひとつひとつ、木桶の癖を把握し、目指す味に合わせるために管理したり、自然の温度変化を見据えて個性を出したりしています。たとえば、香川県小豆島町の正金(しょうきん)醤油さんも木桶で仕込んでいます。大手の醤油メーカーに比べれば生産量も規模も小さいですが、国産の大豆と小麦を使い、熱狂的なファンから、「煮物や炊き込みご飯などの調理に使うと、素材を引き立ててまとめてくれる」と評価されています。若い世代では、福岡県糸島市のミツル醤油醸造元の4代目・城慶典さんも注目です。城さんは東京農大在学中から、先々代の祖父時代の自社醸造を復活させたいと研究を重ねていました。そんな時、「職人醤油」のサイトを見て、僕に連絡をくれたんです。そうして実現した約40年ぶりの自社醸造は、原料は九州産で、2年間木桶で熟成した、こだわりが風味に詰まった一品となりました。

職人醤油

 ――高橋さんのチャレンジが、新たなチャレンジャーを呼び込んだわけですね。今後はどのような展望を描いていますか。

 発酵食品や醸造業界をどうしたい、という大層な思いよりは、ものづくりをされている作り手さんに、スポットライトを当てていきたい、という思いが私には強いです。

 今後は醤油の特徴を活かした料理を楽しめるレストランをやりたいですね。そのためには、醤油の特徴をお客様にきちんと説明できるスタッフの育成が不可欠です。前橋や松屋銀座のスタッフも、販売だけでなく、お客様にとってのナビゲーターとなる人材が集まりました。彼らから「こんなことをやりたい」という希望が出てきて、僕が何もしなくても回っていく状態が、会社としては理想の形かもしれませんね。

 

プレゼント

「職人醤油」朝日マリオン・コムセレクト6本セット を6人にプレゼント!

「職人醤油」朝日マリオン・コムセレクト6本セット

・濃口:秋田県・石孫本店の「百寿」(411円、商品番号04)
・淡口:香川県・正金醤油の「天然醸造 うすくち生醤油」(411円、同06)
・白:愛知県・ヤマシン醸造の「ヤマシン白醤油」(411円、同78)
・甘口:宮崎県・長友味噌醤油の「カネナしょうゆ」(391円、同71)
・溜:愛知県・丸又商店の「尾張のたまり」(462円、同50)
・再仕込み:福岡県・ミツル醤油醸造元の「生成り、さいしこみ」(648円、同80)

※応募には朝日マリオン・コムの会員登録が必要です。以下の応募ページから会員登録を行って、ご応募ください。

→終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。

 

《醤油の作り方と種類》

職人醤油

 高橋さん監修の「醤油本」によると、醤油作りの工程には、「一麹(こうじ)、二櫂(かい)、三火入れ」という格言があるという。原材料の大豆、小麦に火を入れ、種麹を混ぜる。塩水を加え、乳酸菌や酵母菌が働くよう、櫂で攪拌(かくはん)すると諸味(もろみ)ができる。最後に、諸味を圧搾してできた生(き)揚げ醤油を火入れして、醤油ができあがる。これが基本工程。

 原材料の割合や、火入れ、醸造の工程の違いによって、大きく次の6種類ある。

 【濃口】基本工程でつくる。熟成期間は3カ月から2年。香りが強く万能で、刺し身につけても、煮物、焼き物にかけてもいい。

職人醤油

 【淡口】短い仕込み工程でつくる。淡い色で、素材の色をきれいに演出。塩分が高めなので、塩味の効いた隠し味にも。

 【白】原料は小麦が主で甘みがある。淡口よりさらに淡い色で素材の色を生かすので、だし巻き卵やすまし汁などに使う。

 【再仕込】原材料と麹に塩水ではなく醤油を加えて作る、いわば「二段仕込み」。刺し身につけたり、ソース代わりにしたりと濃厚な味を楽しむ。

 【溜】大豆を蒸してできた味噌玉に種麹を混ぜて、発酵・熟成する。仕込み水を少なくし、旨味を凝縮。つけ醤油として照り焼きなどにも使う。

 【甘口】九州や四国、北陸で好まれる。アミノ酸液や甘味料が混合され、地域によって甘みが異なる。煮魚や刺し身にも。

 

会社データ

職人醤油

 ◆伝統デザイン工房(前橋市西片貝町5-4-8)
 2007年にネットショップをオープン。10年には、品数を約50点に増やし、前橋市西片貝町に初の直営店「職人醤油 前橋本店」を開設した。16年2月、東京・銀座の松屋銀座地下2階食品売り場に「職人醤油 松屋銀座店」を出店。同年12月から17年2月にかけて、同売り場前のイベントスペースで、「冬の醤油あそび」と題して、醤油の味の違いから、好みのそばつゆや煮物の味付けを見つける料理教室を実施した。
 現在、29都府県の蔵元と付き合い、80種類の醤油と3種類のみりんを扱う。2016年度末の年商は、約7000万円を見込む。
http://www.s-shoyu.com

(2017年2月27日掲載。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は更新時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)