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デザインの勉強をしていた大学時代、何となくおしゃれそうだなって見たのが最初。5、6回は見ていますが、いつも何とも言えない余韻が残るんです。
俳優、モデル、ミュージシャン、画家と色んな顔を持つビンセント・ギャロが監督し、主演もしています。舞台はニューヨーク州バファロー。ある冬の朝、他人の罪をかぶって服役していたビリーが出所してきます。久しぶりに両親に電話したビリーは「都会で成功し、結婚して美しい妻もいる」とうそをつく。それを取り繕うため、少女レイラを拉致し、妻と偽って実家に連れて帰ります。
わがままなビリーは最初、レイラに命令してばかり。一方で、トイレを我慢していて、変な格好で探し回るけど見つからない。そんな随所にちりばめられる笑いの要素が絶妙なんです。
中でも、ボウリング場で証明写真を撮るシーンが一番好きです。無表情で文句を言うビリーに、おどけてポーズをとるレイラ。そのやりとりがまるで夫婦漫才みたい。他にもレイラがタップダンスを踊ったり、実家では父親が歌い出したり。本筋とは関係ない場面が突然挟み込まれるんです。どれも自分にはない発想で、ギャロのセンスを感じました。
全編におしゃれな空気が漂う。その中にも笑える部分があり、それが不思議な余韻の正体だと気付きました。僕のイラストにもどこかにクスッとさせる部分を入れています。ギャロから受けた影響かもしれませんね。
聞き手・永井美帆
監督・主演=ビンセント・ギャロ
製作=米
出演=クリスティーナ・リッチ、アンジェリカ・ヒューストンほか 1979年、愛知県生まれ。雑誌の挿絵や漫画、アニメーションなど幅広く活躍。4月28日~5月10日、東京・原宿のギャラリー「ル・モンド」でグループ展。
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