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父親が映画の看板描きだったこともあって、子どもの頃から映画館に入れてもらっては前の席で見ててね。大人になっていつの頃からか、メモとイラストで鑑賞の記録を残してる。描きためたノートは数十冊になるかな。もちろん「ベイブ」の記録もあるよ。
養豚場からもらわれて、お祭りの景品にされた子豚のベイブ。そこから牧場主の夫婦の手に渡り、ヒツジや牧羊犬、ニワトリ、アヒルなど色んな動物と出会う。ベイブはそこでなんとか生きていこうと、羊飼いの手伝いをして奮闘する。
僕も高校卒業後、徳島の田舎から一人で大阪に出てきて働きました。自分の生きる場所を一生懸命探さなあかんと思っていたし、たくさんの人に出会って助けられた。そんな思い出がベイブに重なって、ずっと泣きながら見た記憶がある。
体調を崩したベイブを牧場の主人が歌で励ますシーンは、優しさが伝わってきた。普段はぶっきらぼうなのに、しまいには踊ってしまうところや、牧羊犬コンテストでベイブを「よくやった」とねぎらうところも感動的。
僕は普段から、人間のしていることを動物がしたらどんな風になるやろうって考えてる。例えば、孫の運動会を見に行ったらインスピレーションがわいて、ペンギンたちが玉入れしている絵を描いたこともある。そんな風にたくさんの動物を描いてきたけど、けなげに頑張るブタのベイブもまた、とても魅力的だったな。
聞き手・中村和歌菜
監督・共同脚本=クリス・ヌーナン
製作=豪・米
出演=ジェームズ・クロムウェル、マグダ・ズバンスキーほか さとう・くにお
1940年生まれ。擬人化した表情豊かな動物を描く。大阪・天満にショップと作品展示室を備えた「Kunio Gallery」がある。 |