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映画はそれほど見ないし、ミュージカル映画も好みではないけれど、これだけは繰り返し見ています。自分の中に漠然とあった幸せの形を見せてくれる。この映画みたいな暮らしがしたいですね。
舞台はナチスが台頭し始めたオーストリア。修道女を志す主人公のマリアは、妻を亡くした退役軍人、トラップ大佐と7人の子どもたちの元に家庭教師として迎えられます。うちは家族のだんらんみたいなものがあまりなかったので、大家族って憧れ。みんなで歌ったり、ピクニックをしたり。時にはけんかしたり、許し合ったり。共に喜んで共に泣けるような家族の姿が、自分が求めていたものだったんです。そんな一家を、マリアのスカートと大佐のネクタイ、子どもたちの遊び着をイメージして描きました。
生きる喜びとか、生きる幸せの瞬間が光の粒として入っているような、うららかな日差しのような映画。私もこんな、人が幸せな気持ちになるものを作っていけたらなって思っています。
マリアが修道院に戻ってしまって、悲しい時はあの歌を歌おうと、子どもたちが「マイ・フェイバリット・シングス」を歌う。そこに声が一つ増えて、振り返るとマリアがいる。ここで必ず泣いちゃいます。理屈じゃないんです。泣けるってことは、何か意味があるんだろうなって思うんですよ。でも、それが今はわからないから見続けるのかもしれないし、大事にしている玉手箱なんです。時が経つとわかるのかな。
聞き手・岩本恵美
監督=ロバート・ワイズ
製作=米
出演=ジュリー・アンドリュース、クリストファー・プラマーほか おおみや・えりー
1975年生まれ。近年は小山登美夫ギャラリーに所属し、絵画展も開催。近著に短編小説集「猫のマルモ」(小学館)。 |