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大学時代に出会いました。VHSのパッケージに「世界一不幸な女の 世界一おかしな物語」とポップな文字で書かれていて、ブラックユーモアのコメディーかと思いました。ところが、全然笑える内容ではなかった。
マッチ工場で働く少女イリスは美人ではなく、狭いアパートで母と義父との3人暮らし。お給料は家族の生活費に消えていきます。彼女は社会の底辺で報われない、誰もあこがれない人生を送っている。だけど私は彼女にひかれ、次第に応援したい気持ちになっていきました。監督が不幸な主人公を愛情を持って描いているのが伝わってくるからです。
イリスはこれでもかと不幸にあう中で誰にも弱音を吐かず、ある日そこから脱するために犯罪を働きます。それが反社会的な行動だったとしても、彼女が自分の運命に抵抗したという事に胸が熱くなりました。
作中、登場人物はあまりしゃべらないし無表情です。そこがかっこよくて、私の初期の作品は登場人物が淡々と悪いことをしたり、悲しい出来事にあったりしても無表情だったり。そこはかとなく漂うユーモアも魅力でかなり影響を受けました。
私の漫画の主人公はみんな、世間とのズレを感じている本流から外れた人たち。実際私がそのような生き方だったというのもあるのですが、この作品の監督と同じようにそういった人たちに愛情がわくんです。
聞き手・西村和美
監督=アキ・カウリスマキ
製作=フィンランド
出演=カティ・オウティネン、エリナ・サロ、エスコ・ニッカリほか やまもと・るんるん
1973年生まれ。「はずんで! パパモッコ」シリーズ(朝日学生新聞社)、「シトラス学園 バニラ」(宝島社)が発売中。 |