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止めどなくおかしいのに、止めどなく涙があふれてくる――そんな映画です。舞台はユダヤ人迫害が進む1937年のイタリア。グイド一家は、強制収容所に送られます。
明日の命も知れない中で、グイドはどんな時も笑顔で、絶望を生きる強さに変えていくんです。息子には怖がらせないようにとうそをつく。ここでの生活は楽しいゲームなのだと言い聞かせるのです。別の収容所にいる妻には「君だけを思ってるよ」と危険を顧みず、放送室のマイクを通して励ましたりもします。
見る度に泣けるのが、兵士に捕まったグイドがおどけて行進する場面。殺されるとわかっている時でさえ、最期まで絶望の表情は一切見せません。陽気な笑顔の父親の姿を見て、息子はほほえみ返す。ここでもう、字幕が見えなくなるくらい。でもそれは悲しみではなく、前向きな涙なんです。「よくやったぞ」とグイドとハイタッチしたくなるような。
「笑いは生きる力」だと思います。笑顔がどんなに生きる糧になることか。東日本大震災の被災地・石巻を度々訪れていますが、だんだんお客さんに笑顔が戻っていくのを見て実感しています。
落語家の僕にとって、心のひだにすっと入っていくとんちや機転のきかせ方は勉強になります。グイドのように人生をゲームに例えれば、どんな困難も次のステージへの試練。そして一つクリアできた時、こう思いたいですね。「人生は素晴らしい」と。
聞き手・石井広子
監督・共同脚本・主演=ロベルト・ベニーニ
製作=伊
出演=ニコレッタ・ブラスキ、ジョルジオ・カンタリーニほか はやしや・たいへい
1964年生まれ。武蔵野美大卒、現同大客員教授。CDや雑誌などの挿絵も担当。初主演映画「もういちど」のDVD発売中。 |