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21、22歳の頃、漫画家としての見通しもたたないうちに独立して、心も体も疲れ切っていた時に見た。
舞台は1930年代、大恐慌下のハリウッド。昼夜を通して踊り続け、勝ち残ったペアだけが賞金を与えられるという「ダンスマラソン」が開かれる。それは競技会とは名ばかりの見せ物だったが、賞金と食事を目当てに大勢の失業者が詰めかける。
その会場で偶然出会った放浪青年ロバートと大部屋女優のグロリアは、成り行きでペアを組む。夢想家で自分を確立出来ていないロバートから見れば、グロリアは現実家に見えただろう。レースが過酷になるにつれ、必死で勝ち残ろうとするグロリアにロバートは感化されていく。しかし、2人は結局賞金を手に入れることも、結ばれることもない。
「2人が恋人になり、人生をやり直してくれ」と念じながら見ていたことを覚えている。そして、努力しても報われないグロリアみたいな女も、無力なロバートのような男も、現実の世界にも大勢いると考えた。
10年ほどして「海の実」という中年男女の恋愛話を描いた。孤独で不幸な主人公の女を描きながら、懐かしい気持ちと同時に、この女のことを何でも知っている気がした。グロリアの記憶が自分の中に生きていたからだろう。
イラストはグロリアへの思いを込めて描いた。タイトルは「グロリアへの首飾り」です。
聞き手・永井美帆
監督=シドニー・ポラック
製作=米
出演=ジェーン・フォンダ、マイケル・サラザン、スザンナ・ヨークほか すずき・おうじ
1949年、愛知県生まれ。代表作に「オートバイ少女」など。歌手としても活動し、アルバム「未明(よあけ)の歌」が発売中。 |