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絵本「ピーターラビット」シリーズの原作者の人生を描いた映画です。幼少から絵を描き物語を作るのが大好きなポター。上流階級の女性が仕事をするのは難しかった20世紀初頭の英国で、作品を売り込み、絵本出版にこぎつけます。
彼女の制作に対する姿勢に共感しますね。絵を描くときには、まず自然を見ることから始めています。本物の動物を手本にしているからこそ、ウサギが洋服を着ていても、本当に立って歩いているように見える。僕の切り紙も同じです。簡略化したデザインにするにしても、本物を見てからでないと、薄っぺらい表現になってしまうんですよ。
物語の後半、彼女は絵本の印税を使い、幼い頃に訪れた湖水地方の農地を買います。自身が遊び、本物の動物や植物を見て絵を描いた場所を、土地開発者たちから守るためです。しかも、ただ買い取るだけではなくて、農家の人たちと一緒に集落で生きていく。そうして共存するうちに、彼女の思いも、集落に伝わっていくような気がしました。そこで生きる人間と生き物の存在が、風景をより美しくする。僕はそう思います。
ポターと比べたら小さな規模だけれど、僕も土地を管理して、28年前から里山の保護活動をしています。今年は、晴れて農家にもなりました。昔の風景を取り戻したいんです。どんな表現手段においても「自然を守りたい」が僕の出発点。これは、ポターも同じ気持ちだったのではないかな。
聞き手・塩田麻衣子
監督=クリス・ヌーナン
製作=英・米
出演=レニー・ゼルウィガー、ユアン・マクレガー、エミリー・ワトソンほか いまもり・みつひこ
1954年生まれ。切り紙作家としても活動する。近著に「Aurelian 自然と暮らす切り紙の世界」(クレヴィス)など。 |