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赤塚りえ子さん(フジオ・プロ社長/現代美術家)
「2001年宇宙の旅」(1968年)

モノリス ドーン! これでいいのだ

 赤塚りえ子さん(フジオ・プロ社長/現代美術家)「2001年宇宙の旅」(1968年)

 

 初めてこの映画を見たのは、再上映された1978年。13歳の時でした。イラストは、その夜に見た夢のイメージ。今も夢を覚えているのは、あの時の衝撃を忘れたくないからかな。

 ストーリーは難解ですね。猿人の場面が続いたと思ったら、突然人類が月に行く時代に転換。木星に強い電波を発する石板「モノリス」が月面で発見され、調査のために宇宙船を木星に派遣します。

 説明は少ないし、いろいろな解釈ができるのでしょう。でも、私は父(漫画家の故・赤塚不二夫)のナンセンスギャグ漫画に慣れていて、意味を問うとかが、ぶっ壊れている。感覚でモノを捉えるタチなんです。例えば「モノリス」。私に言わせれば、あの真っ黒な色でそびえ立っているだけで美しいの。モノリス、ドーン! これでいいのだ、ってね。

 視覚的にも音的にも、理屈を超えて感覚を直撃する映画なんです。宇宙空間を描く場面では、宇宙船の進むスピードがゆーっくり。無音状態から静かに「美しく青きドナウ」が流れる。本物の宇宙を見ているみたい。真っ黒な宇宙空間にくっきりと映る丸い地球と宇宙船の配置具合は、どこを切り取っても絵はがきにできる構図だと思う。それから、光と影や、真っ白な宇宙船内に赤いイスを置いた色の対比もかっこいい。

 見るたびに、あらゆる感覚が刺激されて、無限にイマジネーションがかき立てられる。シビれる~! って感じ。永遠に新しい映画かも。

聞き手・塩田麻衣子

 

  監督・共同脚本=スタンリー・キューブリック
   製作=米
   出演=ケア・ダレー、ゲイリー・ロックウッドほか
あかつか・りえこ
 1965年生まれ。父・赤塚不二夫の生誕80周年を機に今月、「バカボンのパパよりバカなパパ」の改訂版を幻冬舎文庫から刊行。
(2015年10月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)