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1930年代、全体主義体制下にあったイタリア・ローマなどヨーロッパが物語の舞台。主人公の青年マルチェロは、少年期の体験によるトラウマから逃れようとファシズムに傾倒していく。反ファシストのカドリ教授暗殺をファシスト党から命じられ、パリに亡命中の教授夫妻に近づきます。そして若く美しい夫人のアンナに心を乱されてしまう。
政権や戦争といった大きなものの中で翻弄(ほんろう)されながらも生きる人々のドラマを、丹念に映し出している。爆撃とか虐殺ではなく、食べることや性的なこと、脈々と続いている人間の営みを描いているんですよね。その視点に驚きました。裏切りや、ひきょうになりながらも生きようするところなんかも含め、人間本来の残酷さや美しさを感じます。
イラストにしたのはアンナ。ヒョウの毛皮らしきものを首に巻き、黒い犬を連れてお買い物に行くんです。そのシーンがなんだか生と死の対比を感じて印象的でした。アンナ役のドミニク・サンダの表情やたたずまいがすごくセクシーなんですよね。自分の作品でも彼女のもつような女の色気を表現できたらいいなあと思っています。きれいごとではない、人間の官能的な部分を描きたいと常に考えるようにもなりました。
最後まで緊張感の続くストーリー、構図や音楽の美しさ、俳優の魅力、全てがそろっている。「これが映画ってものなんだ」と、何度見ても圧倒される作品です。
聞き手・秦れんな
監督・脚本=ベルナルド・ベルトルッチ
製作=伊・仏・西独
出演=ジャンルイ・トランティニャン、ドミニク・サンダほか こばやし・えりか
1978年生まれ。小説「マダム・キュリーと朝食を」が昨年の芥川賞候補に。12月にコミック「光の子ども2」が刊行予定。 |