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モノクロの映像が本当に美しくて、怖いけれど見入ってしまう作品です。
アメリカの田舎町に暮らす男が、銀行強盗で奪った1万ドルを幼い息子と娘に預けます。その後、男は死刑になりますが、男と牢獄で一緒だった、ロバート・ミッチャム扮するハリーという偽伝道師が、お金を狙ってやってくる。ハリーはハンサムで言葉が巧み。皆だまされ、子どもたちの母親は彼と結婚します。しかし殺されてしまう。兄妹は、川を小舟で下って逃げていきます。
川下りの場面は童話のよう。夜、星がきらめいて、月明かりが照らす中を舟が行くと、川辺にいろんな植物や小さな動物が現れます。影絵や工作のようで、どこかたどたどしく、手づくりの魅力があります。でも、追いつめられる恐怖感がスリリング。しかも、男の子は自分だけハリーが悪人と見抜いていて、周りの大人は誰も味方にならない。悪夢ですよ。
兄妹は、保護した孤児たちと生活する、厳しいけれど善良な女性、リリアン・ギッシュ演じるレイチェルの家にたどり着きます。追ってきたハリーが家の外に潜み、レイチェルが猟銃を持って窓際で見張る終盤の場面。そこでハリーが、「leaning(身をゆだねる)」と繰り返す一節がある、黒人霊歌を口ずさむ。すると、レイチェルも声を重ねるように歌うんです。2人とも、自分が正しいと強く思っている人物です。善と悪の両極ですが、私には、2人が表裏一体に見えました。
聞き手・小寺美保子
監督=チャールズ・ロートン
製作=米
出演=ロバート・ミッチャム、シェリー・ウィンタース、リリアン・ギッシュほか あさお・はるみん
1966年生まれ。著書に「三時のわたし」など。自身のエッセー「私は猫ストーカー」が、2009年に映画化。 |