|
船の模型作りが趣味だった父親の影響で、子どもの頃、飛行機の模型が好きだったんです。それで飛行機が登場する映画をよく見るようになり、1960~70年代の戦争映画は大体見ていました。
中でもこの映画は、空中戦をリアルに追求している点が魅力。模型やかつて飛んでいた本物の軍用機を使った、パイロット目線での空撮に衝撃を受けました。CGでは表現できない迫力があります。
舞台は1940年の夏。第2次世界大戦中、ドイツのイギリス本土上陸作戦を前に、両国の空軍が戦った。その史実が克明に描かれています。
この絵は、イギリスの戦闘機スピットファイアがドイツの戦闘機を退ける場面。戦闘音が一切消えて、音楽のみが流れる。敵味方の飛行機が入り乱れる映像が真に迫ってきます。当時の空中戦には、まだ一対一の中世の騎士道精神が残っているように思えました。
戦争映画らしからぬ描き方も随所にあります。ドイツ軍の軍人が食卓を囲む場面では、消息不明のパイロットがいることを、キャンドルがともった空席を映して表現。イギリス空軍本部の女性将校は、パイロットの夫が負傷した連絡を静かに受け止める。人間描写は淡々としていますが、パイロットには皆家族がいて一人間として戦っていたはずです。
戦争映画は、どちらかが正義か悪かに偏りがちですが、これは両国の将兵の立場で客観的に描いているのが印象的ですね。
聞き手・石井広子
監督=ガイ・ハミルトン
製作=英
出演=ローレンス・オリビエ、マイケル・ケイン、ロバート・ショウほか はやし・りょうた
1961年生まれ。東京近郊の風景を写実的に描く。1月14日~18日、なかのZEROでトーキョー・イロエンピツ・スタイル展を開催。 |