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高校生の時、それまでの子ども向け映画を卒業して自分なりの「映画体験」をしようと思い立ち、名画座通いを始めました。ちょうどその時期にフランス・ヌーベルバーグの映画が日本に入ってきた。関係するものはほとんど見た中で、印象に残ったのがこの映画。20分程度の短編だから、全シーンを思い出せます。
ベルナデットとジェラールという若い恋人同士と、ベルナデットに憧れ、2人を追いかけ冷やかす5人の少年のお話。とにかく自転車が多く登場する。ベルナデットの自転車のサドルに男の子がキスする場面には、トリュフォーらしいエロチシズムが表れています。原題は「LES MISTONS(レ ミストン)」で「いたずらっ子たち」の意。邦題が秀逸だと思います。
僕も子どもの頃はよく男女2人連れの大人を冷やかしたけど、年上の女性に憧れたのは中学生になってから。お姉さんより少し上、母親よりは少し下の年齢の女性にね。男の人は自分のそんな記憶と重ねてこの映画を見るんじゃないかな。
1990年、「あこがれ」と題した個展を開き、この映画のラストシーンを描きました。後に林望さんのエッセー集「テーブルの雲」(新潮社)の単行本の装丁画にもなった。森の中、喪服姿で自転車を押すベルナデットの絵。実は映画では森の中でもないし自転車も押してない。だから今回は忠実に描いてみました。モノクロ映画をカラーで描くのはご愛敬。これはもう絵描きの業のようなものなんです。
聞き手・安達麻里子
監督・共同脚本=フランソワ・トリュフォー
製作=仏
出演=ベルナデット・ラフォン、ジェラール・ブランほか やぶき・のぶひこ
1944年生まれ。装丁や文筆もこなす。近著は「連句日和」(俵万智、和田誠、笹公人との共著=自由国民社)など。 |