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上田秋成の「雨月物語」を題材にし、戦国時代が舞台です。陶工の源十郎は愛妻家。ですが、妻子を残して陶器を売りに行ったとき、京マチ子さん扮する若狭という姫君に魅せられてしまい、一夜を共にします。でも実は若狭は死霊。恐ろしい目に遭います。
30年ほど前に映画館で見ました。監督の力量が最初から最後まできらきらしていますよね。白黒ですが、想像力が広がって色が見えるような映画です。そして、実際の出番は多くないのに存在感のある京マチ子さん。あまりの美しさにフラフラでした。
日本女性の美しさの極致は、能面のような顔だと私は思っています。顔の表情が角度によって変化して見えるところを、彼女は習得されているように思いました。また、歩く姿も能舞台を見ているかのよう。あれだけ美しかったら、どんな愛妻家も奥さんのことを忘れてしまうんじゃないかしら。
以前、縦2メートル、横3メートルのキルトの大作を作ったときは紫を基調にした妖しの世界を、今回は、このサイズの布切り絵でかわいらしく華やかな源十郎の夢の世界を、いずれも夜を思い描いて表現しました。私は作品に必ず日本の古典文様をあしらいます。そのために、文様事典を毎日見て素材を探しています。左下の露芝文様は、夜露のイメージで施しました。
映画館には、月に2回は行きますね。いい映画を見ると、インスピレーションがわくんです。
聞き手・土田ゆかり
監督=溝口健二
脚本=川口松太郎、依田義賢
出演=京マチ子、水戸光子、田中絹代、森雅之ほか はっとり・さなえ
サナエアートスタジオを主宰。4月23日(土)午後1時、東京・自由が丘の東急セミナーBE(TEL03・5726・4153)で講演会。2200円。要予約。 |