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トニー エスペラント語のサークルで見て、面白い試みの映画だと思いました。舞台は第2次大戦末期のフィンランド・ラップランド。反戦的態度が問題視され戦場に置き去りにされた狙撃兵ヴェイッコと、護送中に爆撃を受けた敵軍のロシア軍将校イワンを、先住民族の女性アンニが小屋にかくまい共に暮らすことに。しかし、3人はそれぞれの言語で自分勝手にしゃべっているんです。
小栗 お互い全然違う意味で理解している、かみ合わない面白さは字幕を見ている私たちにしか分かりません。漫画などでは「神の視点」と呼ばれていますね。登場人物はすれ違っているのが分からないけれど、読者は全部知っている。
トニー ヴェイッコは標的にされやすい友軍のドイツ軍の制服を着せられていた。ナチスを敵対視しているイワンはののしるのですが、ヴェイッコがいくら話しても事実を理解してもらえない。
小栗 軽いふれあいの場合は同じ言語をしゃべる必要が無いと思うけれど、単純な話じゃないときは違う。夫は流暢(りゅうちょう)に日本語をしゃべるけれど、それでも時々行き違いが生まれます。
トニー アンニは言葉が通じない中でも積極的に振る舞い、2人と関係を持っていきます。そのことで最終的に彼らは仲良くなる。戦争が終結し彼らが故郷に帰ったあと、彼女は2人との間に出来た子どもらに語りかけます。その場面が、彼女が関係を中和したという象徴のように思えました。
聞き手・西村和美
監督・脚本=アレクサンドル・ロゴシュキン
製作=露
出演=アンニ・クリスティーナ・ユーソほか おぐり・さおり とにー・らずろ
1995年に同居開始。共著に「ダーリンは外国人 まるっとベルリン3年め」(KADOKAWA)ほか。 |