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ダイアンはシングルマザー。15歳の息子・スティーブは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)で、施設に入っています。ある時、問題行動を起こした彼を引き取ることになります。情緒不安定で、攻撃的になると手がつけられなくなってしまう息子に困惑する中、隣家の女性カイラが家庭教師を引き受けてくれることに。彼女も心を病んでいて、今は高校教師の仕事を休職中。そんなそれぞれ何か抱えているような、3人のお話です。
ヒールの高い靴に、スケスケの洋服。ダイアンの派手なファッションに、最初は抵抗を感じたけれど、内面は真面目で、一生懸命な女性なんです。息子が大きくなって、大学へ行き、きれいな人と結婚して……と、想像するシーンはとても切ない。私も子育ての苦労や、子どもの反抗期を思い出し、共感しました。
母と子の話だけではなく、思わず涙したのは女性2人の友情です。幸福そうに見えても、お互い不安があると、わかり合っている。こんな関係はなかなか築けないと思います。
グザビエ・ドラン監督が手掛けた日本公開の5作品は全て見ていますが、最近作のこれが一番です。今までの作品のような、インテリアや洋服、音楽などに凝ったファッショナブルな見せ方ではなく、もっと本質的なものに触れている。過去にも親子関係や確執を描いてきた監督の、自伝的な部分があるのかもしれませんね。制作時25歳、若い監督の成長と才能を感じました。
聞き手・秦れんな
監督・脚本=グザビエ・ドラン
製作=カナダ
出演=アンヌ・ドルバル、スザンヌ・クレマンほか にしむら・れいこ
1942年生まれ。著書は約200冊。最新刊「本当に大切なものだけで生きてゆく」(KADOKAWA)を5月に発売。 |