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NASAの技術者の実話なんですよね。アメリカの炭鉱町に住む若者たちは、将来鉱山に勤めるのが当然だと考えています。1957年秋、旧ソ連による人工衛星スプートニクの打ち上げに高校生の主人公は感動し、友達とモデルロケット作りに目覚めます。炭坑夫の父親に反対されたり、同級生から白い目で見られたり。打ち上げに何度も失敗して挫折しそうになるけど、高校の教師に背中を押されて乗り越えていきます。ロケットを空へ打ち上げようとする主人公たちの夢を見る気持ちが、絵の道に進もうとしていた青春時代の自分と重なりました。
物語の中盤、主人公がある事情で学校を辞め、父親の鉱山で働き始めます。夜、彼が作業用エレベーターに乗り、鉄格子の間から空を見上げると地球を周回するスプートニクが見える。上をじっと見つめた主人公が、ゆっくりと地下の炭坑に消えていくシーンが印象的です。暗くて狭い場所で「これからどうしたらいいんだろう」と考え込んだのでしょう。まるで昔の自分を見ているようでした。
私が絵の道に進んだのは、主人公のように学生時代に出会った先生たちの影響も大きいです。イラストは、映画のシーンではなく、お世話になった人への思いがロケットになって青空へ昇華していくイメージを描きました。秋は人生について深く考えることが多い気がします。その秋を象徴するイチョウの黄色と、ロケットと青空が自分の中で一つに組み合わさりました。
聞き手・大野紗弥佳
監督=ジョー・ジョンストン
製作=米
出演=ジェイク・ギレンホール、クリス・クーパーほか いしい・まや
1978年、千葉県生まれ。個展での絵画作品発表が中心。イラストのほか、作家・万城目学らの本の表紙装画も手がける。 |