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いつか、人形アニメーションで、こんな映画を作ってみたい、と思い続けている作品です。
1940年、スペイン中部の小さな村が舞台です。姉イサベルと妹アナは、巡回映画「フランケンシュタイン」を見ます。映画の後、妹は姉にフランケンシュタインは村はずれの小屋に住んでいる精霊だよと教えられ、その存在を信じ、憧れを抱きます。
アナはけがをした兵士と小屋で出会い、彼をフランケンシュタインだと思い込んで、仲良くなるんです。周りの子どもが成長していく中、映画と現実の区別がつかず、アナは一人取り残される。色々なことが解せないアナの思いに子どもの頃の自分を重ね、ドキュメンタリーを見ているようでした。
ストーリーを比喩的に詩情豊かに描いていくのも作品の魅力です。アナの父親が靴音をごとんごとんと響かせて歩く音。毒キノコ、姉の死んだふり、大きな足跡、どこかにつながっている線路。様々なものを使って現実の中の幻想へ導かれていく。
僕の作品の「こまねこ」には、雪男が登場します。主人公が雪男に遭遇して最初は怖がるんだけど、だんだん興味を持ち始めるんですよ。この作品を見たある少年が実際に家の中に雪男が隠れているんじゃないかとおびえていたそうです。アナのように幻想と現実の間を生きている子どもは多いのかもしれません。
聞き手・佐藤直子
監督・原案・脚本=ビクトル・エリセ
製作=スペイン
出演=アナ・トレント、イサベル・テリェリアほか ごうだ・つねお
1967年生まれ。NHKキャラクター「どーもくん」やネコが主人公のこま撮り人形アニメーション「こまねこ」などを手がけた。 合田さんの新作「ワクワクこまちゃん」が、Amazonプライムビデオのパイロット・シーズンで配信中。 プライムビデオは、有料のAmazonプライム会員のみが試聴できるが、パイロット・シーズン内の作品は、Amazonに会員登録していれば無料で見られる。 |