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藤岡ちささん(画家)
「メリー・ポピンズ」(1964年)

人生をすてきに変える魔法

 藤岡ちささん(画家)「メリー・ポピンズ」(1964年)

 

 歌によってストーリーが彩られている方が感情移入できるから、ミュージカル映画が好きなんです。この映画を初めて見たのは美大生の頃。アニメーションの動物に躍動感があって、デザインの参考にもなりました。

 ロンドンに住む銀行員のバンクス一家の元へ、乳母の求人広告を見たメリー・ポピンズが空から舞い降りてきます。2人の子どもはすぐにメリーと打ち解け、メリーの友人バートが描いた絵の中に入ったり、笑うと宙に浮く老人と一緒にお茶会をしたり、不思議で楽しい体験をします。体が浮くって普通はありえないことだから、夢のような感じ。

 子どもたちは父バンクスの勤め先近くではハトのえさを売る老女、屋根の上では煙突掃除人たちと出会います。映画を改めて見返すと、楽しそうに歌ったり踊ったりする彼らと厳格な父が対照的に描かれていることに気がつきました。

 好きなシーンは、メリーが「お砂糖ひとさじで」を歌いながら指を「パチン」と鳴らす魔法で、子ども部屋が勝手に片付くところ。ささいなことが楽しみに変わるという考え方がすてきです。

 私が洋菓子店「西光亭(せいこうてい)」のお菓子の箱にイラストを描くようになったのは、この店でアルバイトをしていた時に、大学卒業記念として一枚の絵をプレゼントしたことがきっかけです。映画のイラストには、10年以上描いているリスも仲間に入れました。

聞き手・根津香菜子

 

  監督=ロバート・スティーブンソン
   製作=米
   出演=ジュリー・アンドリュース、ディック・バン・ダイクほか
ふじおか・ちさ
 1977年生まれ。東京都渋谷区にある「西光亭」のパッケージなどに、季節やイベントに合わせたリスの絵を250枚以上描いている。
(2016年7月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)